トレッキング7日目。
明日が最終日だが、明日は山から4時間ほどかけて村に下るだけなので、実質今日が山を歩く最終日と言ってもよい。
今日も、2回5000mほどの峠を越える。
しかし、一昨日登った時ほど道も急勾配ではなくまだ少し楽である。
それにさすがにずっと標高を4000m越える所で歩き寝てきたので、少し疲れも溜まってきており体も重く感じる。
そのため、無理して早く歩かず自分のペースでじっくり歩くように心掛ける。
本日は、ペルーで2番目に高い山を見ることができるなど景色を楽しむことのできる日なのだが、残念ながら晴天とはいかず雲が多い空模様だ。
そのため、頑張って5000mまで登ったものの、山の頂上付近は雲に覆われてしまっている。
8日間という長い間登っているので、こういう日があるのも致しかたがない。
むしろ、これまでずっと天気が良く、雨も降ることがなかったのを感謝するぐらいだ。
と言うか、もうかなり疲れきってしまって、景色を楽しむ余裕もなくなってきてしまっていると表現したほうが良いかもしれませんが‥‥。
キャンプ地に着くと、ガイドのマルコが羊を食べないかと尋ねてきた。
地元の牧場の人から羊を一匹買うことができるということなのだ。
それを、僕ら4名に他のグループの2名、更にそれぞれのガイド、ポーターの2名づつの全員で10名で食べようというのだ。
もちろん、支払いは僕ら旅行者だけで、ガイド、ポーターは払わない。
それでも、代金は羊一頭にそれを料理してくれて、85ソル(約3400円)。
一人あたり14、5ソルぐらいにしかならない。
こちらの値段で考えると少し高い気もするが、なかなか羊一頭をその場で殺して食べるということは経験できないし、ガイド、ポーターもいいやつらだったのでお礼代わりに奢ってあげることは全く問題ない。
しかし、イスラエル人のギリは15ソルは高くそんなに払いたくないから食べたくないと言う。
そして、それからどうするかみんなで話あった結果、ギリ以外のみんなで出し合って食べることになった。
お金を払うか、払わないかは個人の問題なのでそれはそれで仕方がないと思うのだが、たかが日本円にすると約600円くらいのもの。
日本でマクドナルドでセットを食ったってそれくらいかかります。
僕としては、せっかくだから参加した方が良いと思うのだが、それぞれの旅のスタイル、予算があるので干渉することはできない。
しかし、やはり旅をするからにはお金をけ節約することばかり考えるのではなく、使う時には使ったほうが良いとは思います。
そんなこんなで、どうにか羊を食べることに決定しました。
羊飼いのおっちゃんが羊を殺しに行くというので、そのような場面を見逃してはならんと付いていきます。
おっちゃんは、山の斜面に広がって草を食む羊たちを追いたてていきます。
そして、羊を囲いの中に追い込んでいきます。
全ての羊を集めたと思うと、おっちゃんは羊たちを見回し、一頭の羊を捕まえ足つかみ逆さにひっくり返しました。
どうやら今晩の僕らのディナーが決定したようです。
そして、この羊をどっか連れていって殺すのかと思いきや、おばちゃんと二人でその羊を押さえつけ、ナイフを取り出します。
もしかして、ここで殺してしまうのでしょうか。
周りにはたくさんの羊たちもいるっていうのに。
そんな僕の思いとは裏腹に、羊の首の辺りに洗面器を置き、おっちゃんはグッサリとナイフを首に突き立てていきます。
真っ白な毛の間から赤い血が飛び散ります。
その血を洗面器で受けます。
あっという間に洗面器は血でいっぱいになります。
羊はほとんど抵抗することもなく動かなくなってしまいました。
その間、鳴き声をあげることもありませんでした。
不思議なのは周りの羊たち。
仲間が目の前で殺されているというのに、パニックになることもなく、その周りでうろうろしているだけです。
死というものに対して、感情はないのでしょうか。
僕は、このように動物を目の前で殺す場面を見たのは初めてなのですが、言葉も出ずう〜むと小さく唸り見続けることしかできませんでした。
おっちゃんと、おばちゃんは、その後も手際よく羊を捌いていき、 2、30分もすると羊ではなく、肉と毛皮になってしまいました。
先ほどまで元気に歩き回っていた羊。
それが、今では、単なる肉と毛皮。
なんか不思議な感じがします。
肉は、塩と香草のようなもので味をつけられ鍋で煮て料理されました。
それを、蒸かしたジャガイモと一緒に手で掴みかぶりつき食べました。
柔らかく、9人で食べたとは言えボリュームも満点で、お腹もいっぱい、うまかったです。
満足、満足。
でも、やはり時折、頭の片隅に羊の姿が浮かびます。
羊さん、しっかり美味しく食べさせてもらいましたので、どうぞ安らかに成仏して下さい。