たびタビ旅
旅日記。中南米、アジアなどの2年4ヶ月半の旅。

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約1週間のフンザ、カリマバードの滞在を終え、フンザの北、ゴジャール地方と呼ばれる地域に移動します。
目指す場所はパスーという村で、カリマバードから車で2時間くらいで行けます。
ちょうどパスーに行くという同じ宿に泊まっている日本人の男3人と一緒に行くことにします。
女の子でも入ればさらにいいかもしれませんが、パキスタンで何故か日本人の一人旅の人に会っていないんです。
今年は特に旅行者は少ないようですが、これほど会わないってのも不思議な感じがします。
それでも、やっぱり大勢での移動というのは気分的に楽であります。
乗る車を探したり、値段を交渉するなど、いつも一人でやらなければならないことも分担してできますから。
今日は分担というより着いていっただけと言ってもいいかもしれませんが。
楽させてもらいました。
でも、そう言えば誰かと一緒に移動するてのは久しぶりです。
いつ以来だろ〜。
あれ、もしかして昨年の中米以来してないのかな。
一人旅と言えど、ずっと一人で移動しているなんて意外な気もしますね。

パスーに昼過ぎに着き、昼飯を食べると、さっそくみんなでパスー氷河に行くことにします。
宿から氷河を見ることができ、簡単に歩いて行くことができるのです。
1時間ほど歩くと氷河の一番下の部分にたどり着きます。
しかし、それは一見すると氷河とは思えません。
氷河というと真っ白な氷というイメージがありますが、そこにあるのは真っ黒でたくさんの岩、石、砂に覆われた山の一部といった感じです。
それは長い年月をかけて氷河が石や砂に覆われてしまったからなのです。
気合を入れなおし登りやすそうな場所をみつけ氷河の上を歩き始めます。
高さは20mぐらいあるでしょうか。
砂利に覆われているため足は滑りませんが、石が転がり落ちてきそうでちょっと怖いです。
慎重に慎重に歩いていきます。
そこを登りきると、ど〜んと氷河が広がっているのが見えます。
上の方には波打っているような真っ白な氷河もあります。
氷河の上にたっているのだという実感が沸きます。
更に上へ向かって歩いていくとじょじょに石や砂がなくなっていきて、足元にも氷が見えてきます。
ところどころ氷の裂け目があったりします。
氷を見るとなんだかワクワクしてきます。
もっと白い氷河を真近で見たいという欲求にかられ、上へ上へと進みます。
砂利の黒い部分がだんだん少なくなっていきます。
氷の上はもちろん滑って歩けないので、細かい砂利の部分を探し氷の上を縫うようにして歩いて行きます。
このあたりまでくると氷の裂け目もかなり大きくなり、落ちたら死ぬなという感じの所もでてきます。
よし、今日はこのくらいにしといたろうか。
氷の上でちょっとびびりながら写真撮影。
いや〜氷河っていいもんです。
| sin | パキスタン(4) | 14:23 | comments(2) | trackbacks(0) |


村で結婚式があるというので行ってみることにします。
昼ごろ村の中心にある広場へ行くと、そこには大勢の人がいました。
いったいこの小さな村のどこにこんなたくさんの人が住んでいたのかという感じです。
男、女にきれいに分かれ、丸く円になって座っています。
そこには太鼓を叩く人が二人、ラッパを吹く人が一人いて演奏しています。
その音にあわせ、円の中で人々が踊っています。
おじいちゃんから小さな子供まで一列に並び、行進するようにぐるぐる回りながら踊っています。
周りで見ている人たちも、手を叩いたり、掛け声をかけたりして楽しそうです。
僕も踊らないかと誘われましたが、踊りの下手な僕は丁寧にお断りさせてもらいました。
それでもみんなの楽しそうな様子を見ているだけで心華やぐものがあります。
でも、残念なことは踊っているのは男の人だけなのです。
女の人も男の人と同じくらいいるのですが、みんな眺めているだけです。
女の子が踊ればもっと華やかになるだろうに残念です。
やはりムスリムだからなのでしょうか。
写真を撮ってもいいかと若い女の子に訊いたのですが、これもやはり断られてしまいました。
でも、最前列に陣取った民族衣装を着たおばあちゃんたちは、喜んで撮らせてくれました。
おばあちゃんたちだって、すごく可愛いんです。
そして、このパーティーの主役たる新郎新婦なんですが、途中で会場に現れ最前列に座ってみんなが踊るのを眺めているのですが、みんなが彼らに積極的に祝福するってふうではありません。
みんな新郎新婦のことを忘れ、ただただ踊りを楽しんでいるように見えます。
でも、堅苦しくなく、みんなが楽しく幸せそうであれば、それが一番良い結婚式パーティーなのかもしれませんね。
僕もちょっぴり幸せな気分にひたりました。
| sin | パキスタン(4) | 23:14 | comments(0) | trackbacks(1) |


パスーで行動を共にしていた日本人3人が中国へ向けて出発してしまったため、僕一人になってしまいました。
ここ10日あまりずっと誰かが回りにいたので、久しぶりの一人きりになってちょっとさみしい気分です。
今日は、イスラム教イスマイール派の偉い人が生まれた日であるとかで、この辺一帯ではお祭りが開かれるとのこと。
昨日の結婚式に続きこのようなことにめぐり合うなんてラッキーです。
村のモスクで開かれるというので行ってみることにします。
さてどんなことが行われるのか。
興味を持ちモスクの門をくぐろうとすると、守衛みたいなおっちゃんが僕の前に立ちふさがります。
そして、ここに入ることは許されないと言います。
どうやらモスリムしか入ることができないようなのです。
宗教的なことだから仕方がないのですが、ちょっと残念。
みんなが中で楽しそうにしているのを横目で見ながら、そこを立ち去ります。
あぁ、ここでもひとりぼっちです。
その後、村の中をぶらぶらと歩いてみるものの、みんなモスクへ行っているのかほとんど人がいません。
シ〜ン。
たまに出会う人もなにやらよそよそしく感じてしまいます。
子牛が一頭いたので頭でも撫でてやろうと近づくと逃げていきます。
は〜、ぽつん。
仕方ないので宿に戻り本を読んだりして過ごします。
そして、夜8時半頃、薄暗い中、ひとりでの食事。
もぐもぐ、むしゃむしゃ。

シ〜ン。

ぽつ〜ん。
| sin | パキスタン(4) | 13:51 | comments(2) | trackbacks(0) |


パスーの観光名所に吊り橋があります。
別に観光目的のために造られたのではなく、住民の普段の生活に使用されているものなのですが、そのスリリングさのためツーリストに知られているのです。
スリリングと聞いちゃ、行かない訳にはいかんでしょう。
その吊り橋はパスーの横を流れるフンザ川に架かっています。
宿を出て川沿いに30分ぐらい歩いていくと、遠くの川の上に細い線が見えます。
あれがもしかして?
更に近づいていきます。
ん?
ん?
お〜!!
やっぱり吊り橋です。
話には聞いていましたが、なんたる頼りなさ。
鉄のワイヤーでできているのですが、その上にひかれている木の板のお粗末なことといったら。
細い今にも折れそうな不揃いな形の木の板が間隔が30cmほど開けられ置かれているのです。
場所によっては50cmほども開いているところもあります。
なんといういい加減な造りなのでしょう。
そして、そんな橋の長さは、なんと150〜200mはあるのではないでしょうか。
う〜む、これを渡るのか。
ちょっと心を落ち着け、気合を入れなければなりません。
救いは高さが川から2〜3mほどと低いということでしょうか。
よしっ!渡ってやるぞ!!
ゆっくりと足を踏み出します。
手はもちろん鉄のワイヤーの手すりをしっかりと掴みます。
ゆっくりゆっくり進んでいきます。
板はすぐに折れてしまいそうなので、なるべくワイヤーと板の重なった所を選び踏んでいきます。
やはり、ゆっくりゆっくりです。
下を流れる川は流れは速いものの深さはなさそうで、橋から川までの距離もないので、たとえ落ちたとしても死にはしないでしょう。
そう言い聞かせ、ゆっくりゆっくりです。
足元だけを見つめ進んでいくと、いつの間にか橋の終わりが見えてきました。
あと少しだ、しかし、ここで気を抜いてはいけない。
最後まで、集中、集中!
そして、とうとう渡りきりました。
ふ〜。
わずか200mくらいの距離で20分ほどもかかってしまいました。
精神的に疲れました〜。
よくぞこんなにも頼りない橋を造ったもんです。

しばらく休憩した後、川の下流に向けまた歩き始めます。
そして、2時間ほど山の麓の平らで広い場所を歩きます。
すると、川沿いの崖を走る細い道になります。
けっこう高くてちょっと怖いです。
その道を恐る恐る進んで行くと、また遠くの川の上に細い線が走っているのが見えます。
はい、本日2本目の吊り橋でございます。
しばらくしてその橋の入り口に到着。
今回の橋は先ほどより長さは短く100mほどでしょうか。
しかし、あきらかに先ほどのものよりぼろい。
橋にしかれている板はさらに細く、そして、間隔はさらに開いているように思えます。
また、橋自体ちょっと捻じれ傾いているようにも見えます。
そして、その橋の横には、昔、使われていたと思われる完全に壊れきった橋がご丁寧にもそのまま残してあり、さらに恐怖を煽り立てます。
しばしの間、座ってその橋を見つめ、精神集中を図ります。
フー、よしっ、行こう!!
気合一発、ゆっくりと足を進めていきます。
実際歩くと、板の間隔が先ほどより広いということが実感できます。
1mほど開いているところもあります。
一生懸命、足を伸ばし越えていきます。
足を長く産んでくれた、お父さん、お母さんありがとう。(正確には足が長いのではなく身長が高いのですが。)
川は幅が狭くなっているため、流れは先ほどより速く感じます。
ゆっくりゆっくり進み続けます。
そして、真ん中辺りまで来た頃でしょうか。
微妙な揺れを橋から感じます。
なんだなんだ?
視線を上げると、向こう側からおばちゃんが歩いてきているじゃありませんか。
おばちゃん、待って待って!心の準備が〜!!
そんな僕をよそにおばちゃんはすたすたと歩いてきます。
おいおい、ここですれ違うのか。
僕はワイヤーに捕まり必死に横に体を寄せます。
おばちゃんはそんな僕の横をすり抜けあっという間に橋を渡りきってしまったのでした。
おばちゃん、恐るべし。
気を入れ直し、再び歩き始めます。
やはりゆっくりゆっくり。
別におばちゃんに負けたっていいじゃないか。
別に競争じゃないんだよ。
ゆっくりゆっくりです。
そして、渡り始めてから15分くらい経った頃でしょうか、とうとう渡りきりました。
よし、僕はやったぞ〜。
よっしゃ〜!
どんなもんだ〜!!

すると今度はおばあちゃんがあらわれ、その橋を何食わぬ顔ですたすたと渡っていくのでした。
パキスタンのおばちゃん、おばあちゃん、恐るべし‥‥。
| sin | パキスタン(4) | 20:04 | comments(0) | trackbacks(0) |


パスーを発ってチャプルソンバレーという所にやってきました。
まず乗合ハイエースで1時間かけてパキスタンのイミグレーションが置かれているスストという町まで行き、そこで乗合ジープに乗り換え断崖絶壁の道を走ること3時間あまり、チャプルソンバレーの一番奥の村ズードフンに到着します。
この谷には、ワヒ族という本来アフガニスタンのワハンに住みワヒ語を話す山地民族が住んでいます。
アフガニスタンまでほんの少しの場所なのです。
そして、ここは日本のガイドブックには載っていないようなかなりマイナーな場所です。
そのためここを訪れる旅行者はかなり少ないです。
村にただ一つと思われる宿の台帳を見ても、週に2、3人来るかどうかといったところでしょうか。
いろいろな事件の影響なのか、今年パキスタン自体を訪れる旅行者の数は例年の半分くらいのようなのですが、それにしても少ないです。
旅行者があまり訪れないためか、ここに住む村の人々はすごく素朴で親切です。
村の中をのんびりと歩いていると、お茶でも飲んでいけと家に招き入れてくれます。
家の中は寒い冬を越せるようにか真ん中に火をおこす場所が設けられ、それを取り囲むように薄い布団のようなものが広げられています。
窓もなくちょっと暗いですが、居心地は良さそうです。
出されたお茶はミルクティーなのですが、この辺りの人はそれに砂糖ではなく塩を入れて飲むようです。
海から離れているため塩分が不足しやすいからなのでしょうか。
最初はなんじゃこりゃ〜と思いましたが、慣れると案外いけるもんです。
村の人はほとんどが英語を話さないのですが、最近の学校では英語教育をきちんとしているのか、若い男の子は以外と話せます。
おかげで簡単な会話をすることもできます。
やはり意思の疎通がができるとさらに楽しくなるもんです。
お茶を2、3杯ごちそうになり、その家を出ます。
そして、また村をぶらぶらと歩き続けます。
するとまた違う家から家に招き入れられるのです。
そして、またお茶をごちそうになります。
いや〜本当に親切です。
腹はちゃぽんちゃぽんになりますけど。
| sin | パキスタン(4) | 20:52 | comments(0) | trackbacks(1) |


チャプルソンバレーにはババグンディーというパキスタンで有名な仙人を祀ったお寺があります。
そこはズードフン村からさらに谷の奥に分け入った場所にあるのですが、トレッキングがてら行くことにします。
そこまではジープ道が通っているのですが、現在その途中が氷河の雪解け水によって遮られており徒歩では難しいということなので、徒歩だけで行けるショートカットの道を歩くことにします。
朝8時半頃、宿を出発します。
宿の兄ちゃんは、「途中、川の中を歩かなくてはならないかもしれないけど、気をつけてね。見かけより川の流れは速いから。」と言って送り出してくれます。
えっ?こっちのコースも結局、川の中を歩かないといけないっての?
一抹の不安を抱えての出発となりました。

天気は快晴です。
ここは標高が3400mもあるので、空はいつもよりもさらに深い青色をしています。
村を抜けて小さな吊り橋を渡り、水のきれいな小川や小さな池があったりするロバが放牧されている緑の草木が生える野原を歩いていきます。
遠くには大きな山も見えます。
なかなか気持ち良いじゃありませんか。
そんな場所をしばらく歩いていくと、それまでの広い場所から一転、狭い谷の中に入っていきます。
道も急な斜面に頼りなさげに通っています。
道といってもちゃんとしたものではなく、人ひとりがやっと通れることができるほど狭い踏み跡のようなものです。
道はどんどん谷底に流れる川に向かって下っていきます。
そして、しまいにはとうとう川岸まで下りてしまいました。
そのまま石がごろごろしている川沿いを川上目指して歩き続けます。
しばらく順調に歩いていたのですが、だんだんと川岸の幅が狭まってきます。
そして、最後には川岸がなくなり、川とそこから上へと延びる急な斜面になって行き止まりになってしまいました。
道は見えず、とてもこの斜面を歩いていけるようには思えません。
どうしたら良いものか。
あ!?ここか!?
ここが川の中を歩かなければならないって所なのか。
川を見ると中ほどにところどころ中洲が見えます。
もしかしてここを伝って歩いていくのか。
よし、やってやろうじゃないか。
靴を脱ぎ、靴下を脱ぎ、裸足になります。
そして、ゆっくりと川の中に足を入れま‥‥。
つ、つ、つめた〜い!!
予想以上の冷たさ。
それもそのはずこの川の水は氷河から解け出したものなのです。
くそ〜負けてたまるか〜。
歯を食いしばり進みます。
冷たいのもきついですが、裸足で石の上を歩いていくのもつらいです。
冷たいし、いた〜い。
最初の中洲まで3mほどの距離なのですが、なかなか進めません。
冷たさに加え川の流れも意外と速く、足の指でしっかりと川底をつかみ耐えます。
少しづつ少しづつ進んでいきます。
しかし、深さも予想以上に深くなってきました。
もう余裕で膝の位置を越えています。
やばい倒れそうだ。
だめだ〜、退却、退却〜!!
慌てて川から上がります。
いや〜冷たいし、速いし、深いし、これは尋常じゃないぞ。
これを渡るのはどう考えても無理じゃないのか。
いったいどうしたらいいのだ。
う〜ん、よし、濡れてもいいから靴をはいて渡ろう。
再び靴をはきます。
よし、もう一度チャレンジだ。
でも、ちょっと待てよ。
その前に渡る場所がここであっているのか、もう一度よく考え直してみよう。
辺りをもう一度見渡します。
すると‥‥さっきは道が見えなく行き止まりと思った斜面にうす〜く、うす〜く、道らしきものがあるじゃありませんか。
これだ〜!!
いや〜危ないところでした。
いったい僕はどこへ行こうとしていたのでしょうか。

その後、斜面や川岸をいったりきたりして歩きますが、しばらくするとまた広い場所へ出ました。
もう安心です。
結局、水の中を歩くことはありませんでした。
宿の兄ちゃんが言っていたことは、いったいなんだったんだ?
そして、出発してから4時間半ほど経った1時過ぎ、とうとうババグンディーに到着しました。
ババグンディーのお寺自体は小さく中にも入ることができず大したことはないのですが、その周辺の景色は実に荒涼としていていいです。
家も数軒しかなく、そこにあるのは山と川、そして、青い空です。
静かです。
まったく世の中から切り離された世界です。
今、世界で大事件が起こったとしても、ここだけはなんの影響も受けずに時が進んでいく、異次元の世界じゃないかというような錯覚を抱きそうです。
歩いていると、少年が前から歩いてくるのが見えます。
どこか水をくめる場所はないかと尋ねます。
すると「僕の家に来なよ。」と誘われます。
そして、彼のおばあちゃんが住む家に行くと、冷たい水、そして、ミルクティーをご馳走になります。
いや〜なんともほっこりとして静かな気分になります。
本当は日帰りでズードフンへと戻ろうかなと考えていたのですが、こうして熱いお茶をすすっていると、この村で一泊してここでのんびりするのも悪くないな、とも思ってきます。
急いで帰る必要もないしね。
まぁ、これからまた4、5時間歩いて戻ることを考えると、その体力があるかなっていう心配も多分にあるのですが‥‥。
| sin | パキスタン(4) | 12:45 | comments(2) | trackbacks(1) |


いよいよ長かったパキスタン滞在を終え、中国へ向かいます。
手の怪我のトラブルもありましたが、たくさんの人々に出会え、また美しい大自然も満喫し、楽しい旅になりました。
またいつか訪れたい国であります。

まずはチャプルソンバレーからイミグレが置かれているスストへと乗り合いジープで行きます。
そこで中国、タシュクルガン行きのバスチケットを購入します。
9時のバスが人数が少ないためキャンセルだと言われ少し焦りましたが、どうにかその後ギルギットから来る11時発のバスに乗ることができました。
簡単な荷物検査、出国手続きを行った後、バスに乗り込みます。
バスは切り立った崖の間を縫うようにして走り、どんどんと高度を上げていきます。
パキスタンの出国手続きは済んだものの、実際の国境は標高4700mのフンジュラーブ峠にあります。
この峠の道は冬には雪で閉ざされ通行できなくなりますが、今は夏の太陽が明るく輝きそのような面影は全く見ることはできません。
そして、3時間ほど上り続けた頃でしょうか。
バスはだだっ広い緑の草が生い茂る場所にたどり着きました。
どうやらここがシャンドール峠のようです。
7年前はここを通りたくてもできなかったのです。
感無量です。
そんな僕の気持ちをよそにバスは停車することもせず走り続けます。
すると記念碑のようなものが建っている場所があり、そこを過ぎると突然、道が変わります。
今まで一車線の凸凹道だったものが、きれいなセンターラインのある2車線の道へとなるのです。
そう、中国に入ったのです。
この道の変わりよう、かなりあからさまです。
この道の違いが、中国とパキスタンの経済力の差なのか。
それとも外国に無様な様は見せることはできないと言う、中国のメンツによるものなのか。

そんな快適な道を下ること5分あまり。
バスは道路脇に一軒だけぽつんと建つ建物の横に停車します。
やってきました、恐怖の中国の荷物検査です。
ここの国境は昔から荷物検査が比較的厳しかったのですが、オリンピックを間近に控えた現在、さらにその厳しさが増しているのです。
ここを通った旅人からのさまざまな噂が耳に入ってきました。
カバンの中身を全て出され、ガイドブック、本等を1ページづつ目を通され、カメラのデータも一枚一枚チェックされ、パソコンを持っている人は電源を入れられ、荷物にキリのようなもので穴をあけられ中身を確認されるなど、とにかく異常とも思えるチェックぶりなようです。
2ヶ月ほど前にはダライラマかフリーチベットと書かれた写真を持っていた日本人旅行者がそれを見つかってしまったため、2、3日拘留されてしまったようです。
ちなみにそれは中国国内では実名で報道され、日本国内でもイニシャルでインターネットのニュース等で流れたようです。
たかが写真ですよ!
おそろしい。
なので僕も前夜はなにか余計な物は入っていないかと、念のためカバンの中をチェックしたのでした。
そういう訳で問題になるような物は持っていないつもりなのですが、ただひとつチベットのガイドブックを持っているので、それについて何か言われないか心配です。
バスに係員が乗り込んできて、荷物を持って降りるように言われます。
僕が先頭になり荷物を持って、建物の中に入っていきます。
台の上に荷物を置きます。
よ〜く調べておくれ、僕は叩いても埃ひとつでないきれいな身だから。
しかし、色の黒い角刈りの係員は何故か僕の荷物には触れずに、違う人の荷物から調べていきます。
そして、その人が終わるとまたその後ろに並ぶ人を調べ始めます。
おいおい、こんな所で僕は放置プレイですか。
嫌な予感がします。
最後に僕はじっくりとってやつじゃないか?
そして、やっぱり僕は最後になりました。
若くて体のでかい係員が僕の荷物を調べ始めます。
まずはウェストポーチとマネーベルトからです。
デジカメの写真を見ていきます。
ダラムサラでの写真は消したので問題のある写真はないはずです。
次に財布の中身を調べます。
そして、その中に入っていたペシャワールのババジイツアーに参加した時にもらったアフガニスタンの紙幣を見た瞬間、その係員の目がキラリとするどく光ります。
「これはなんだ?」
なに〜アフガニスタンの紙幣を持っていたらなにか問題があるのか?
もしかしてタリバンかなにかと関係があるんじゃないだろうなとか言い出すんじゃないだろうな。
僕は、いやそれはパキスタンでもらったものであって、けっしてアフガニスタンには行ってないということを懸命に説明します。
係員は僕をじーっと見つめると言いました。
「これを譲ってくれないか?」
へ?
「いや、外国の紙幣を集めているので、これが欲しいんだ。」
これは遠回しの賄賂の請求なのか。
しかし、話を続けていくとどうやらそうではないようです。
本当に外国のお金に興味があり集めているようなのです。
そう知ると、ちょっと違うかもしれませんが、外国に興味がある者同士ってことでなんとなく親近感が湧いてきて、それなら他の国のお金もあるよと色々出してあげました。
今回の旅では記念にお金をわざわざとっておくというようなことはしていなく、また今までも外国のお金に興味がある人にあげてきているので、それほど多くの国のお金を持っている訳ではありません。
それでもその係員は嬉しそうに手に取ったりして見ています。
あまりにも嬉しそうなので、たいした金額じゃないしあげるよと言うと、「それは駄目だ、中国のお金と交換だ」といって譲りません。
同じ国のお金が何種類かあると、一番少ない金額の紙幣を選ぼうとします。
なんとも律儀な人です。
僕も、要らない余った物で、こんなに喜んでくれるなんて嬉しい限りです。
そんなことをしている内にいつの間にか2、30分経ちました。
そして、お金を交換し終わると係員はもう行っていいよと言ってくれました。
荷物はほとんど調べていません。
これならなんでも持ち込めたんじゃねぇかと思いつつ、ほっとしてバスに戻ったのでした。
やれやれ。

バスはその後、2、3時間ほど走るとタシュクルガンに到着しました。
この町に中国側のイミグレがあります。
ここでもう一度荷物チェックがありましたが、ちらっと見て、x線の機械に通すだけで中身にはほとんど触りませんでした。
入国審査も簡単です。
しばらくパスポートの写真と僕の顔を見比べながら、同一人物か?というような不審な目で見ていましたが、ぽんっと入国スタンプを押してくれました。
また、ここの係員たちはみな若い人が多かったのですが、みんなフレンドリーなのにはちょっと驚きました。
だいたいどこの国でもイミグレの係員は無愛想なことが多いのですが、ここでは笑顔でいろいろと話しかけてきたのです。
中国というと役人がなんか嫌な感じという先入観を持っていたのですが、案外いいやつらじゃないかと思い直しました。
やっぱり実際に会ってみないと分からないもんですね。
そして、ここでは荷物検査も入国審査もスムーズだったんですが、大きな装置の中に入れられての身体検査がありました。
その中で体ごとスキャンするようなのです。
多分、これで体の中に隠している物を見つけようというのでしょう。
中に入って扉を閉められ待っていると、しばらくジーっというような音が聞こえてきます。
30秒ぐらいで外に出されます。
すると若い係員の男の子は何かパンツの中に隠していないかというように僕のズボンを脱がせ見てきます。
もちろん、その中には、僕の大切なもの以外、何もありません。
男の子はおかしいなぁ確かに何か写っていたんだけどなぁみたいな感じで首を捻り、もういいよと言ってきます。
解放してくれるのはありがたいのですが、僕も何が写っていたのか気になってきます。
しかし、なんかあるのかと訊いても、もういいから出て行ってとしか答えてくれません。
いったいなんだったんだ?
僕の体の中に何かあるのか?
もしかして僕が知らない内に宇宙人に何かを埋め込まれていたりして‥‥。
気になります‥‥。

イミグレを出て、バスはレストランの前に止まります。
このバスはこのままタシュクルガンを出てカシュガルまで行くのでここでいったん夕食を取るようです。
僕はこの町で一泊する予定なので別にここで夕食をとる必要はないのですが、ついでだし食べることにします。
待ちに待った中華料理とのご対面です。
パキスタンにいる間、どれだけ中華料理を食べることを楽しみにしていたことか。
いや〜たまりませんね。
って思ったら、この店、フンザ出身のパキスタン人が経営するパキスタン料理の店でした。
美味しかったんですけど‥‥。
中華料理はもうちょっとおあずけであります。
| sin | パキスタン(4) | 18:28 | comments(3) | trackbacks(1) |
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