ギルギットはそれ程観光する所もない町です。
しかし、ここに一週間ほど滞在しなければならないのです。
というのも来週の月曜日に手の傷の抜糸をしなければならないのです。
抜糸なんて簡単なことのようですが、できるなら大きな病院でやってもらいたいので、北部パキスタンでは一番大きな町であるギルギットでやることにしたのです。
しかし、そうは言ってもずっとギルギットにいるのもなんなんで、ここから乗合ジープで2時間ほどの場所にあるナルターバレーに行くことにします。
昼2時にナルターバレー行きの乗合ジープが出発するという場所に行きます。
しかし、そこにはほとんど人はおらず出発する気配はありません。
どうやら3時出発するようです。
そして、3時になりましたがまだまだ出発する気配はありません。
どうやらオールドタイムの3時のようです。
実はパキスタンでは6月よりサマータイムが実施されて1時間早まっているのですが、いい加減というかパキスタンらしいというかこれが完全に徹底されていないのです。
町を歩いていても前の時間そのままの時計をよく見ます。
ですから、バスに乗るときなどには、この時間はニュータイム?それともオールドタイム?っていちいち確認しなければ不安でなりません。
ほんとやるならしっかりやって欲しいものです。
仕方ないので座って待っていると、同じナルターバレーに行くという若い男の人が声をかけてきました。
彼はエジャールという名前で、ナルターバレーの村の小学校の先生をしているようです。
彼は英語が話せるのでいろいろと話をします。
ジープが来ると彼は乗り心地の良い助手席に僕を座らせてくれます。
いいやつです。
ジープは30分ほど走るとジープは止まります。
どうやら新たにお客を乗せるようです。
すると僕は降りるように言われます。
どうやら女の人が乗り込んできたようなのです。
イスラム国家であるパキスタンでは、夫婦でない男女が隣り合わせにならないように座らされます。
ですからこういった乗合ジープでは乗客の乗り降りの都度、うまいこと座れるようバズルを解くようにみんなで一生懸命席順を考えるのです。
今回は女の人が二人来たので、助手席に座っていた僕とエジャールが彼女らに席を譲ることになったのです。
ジープを降り後ろに回ると、後部座席か屋根の上のどちらがいいかと訊かれます。
もちろん屋根の上です。
日本では絶対に許されないバスや車の上への乗車。
こういったことができるのがまた旅の醍醐味でもあります。
風を受けながら楽しむ回りの風景。
さながらぼろっちいオープンカーといったところでしょうか。
横に座っている兄ちゃんが屋根の上に積んである袋の中に手を入れ小さなリンゴを取り出し、僕に食えと渡してくれます。
勝手に食っていいのかとも思いますが、みんな食っているので僕もかぶりつきます。
や〜気持ちいいですねぇ〜。
ジープはどんどんと高度を上げていき、狭い切り立った崖の間を走っていきます。
迫力ある景色ですが、こんなんじゃいつ落石があってもおかしくないなと少し心配になります。
この前、手を怪我して以来、ちょっとした落石恐怖症といったところです。
でも、実際に落石で怪我や死亡する人はいるみたいです。
僕が怪我をして病院にいった時も、医者は僕の怪我を見て第一声で、「ジープに乗っていて石が当たったのか?」と訊いてきたくらいですから。
こわい、こわい。
6時過ぎにナルター村に到着します。
白い雪が積もっているのが見える高い山々に囲まれた緑の木々もたくさんある小さく長閑な村です。
宿はエジャールが下宿している宿に泊まることにします。
夕食もご馳走してくれるといいます。
彼はもともとはここの人間ではなく、教師としてこの村に1年ほど前に派遣されてきたらしいのです。
こんな綺麗なところに住めていいねぇと言うと、ここは何もすることがなく退屈で退屈でしかたがない早くギルギットのような大きな町に異動したいよと言います。
確かに僕でも数日ならのんびりできていいなと思いますが、ずっと住めと言われればやっぱり躊躇しますよね。
話をしながら彼の妹が作ってくれる夕食を待ちますが、なかなかでてきません。
8時を回っても、9時を回っても‥‥。
腹減ったなぁ。
そして、10時を回ってやっと登場!!
そうパキスタン人の夕食の時間はすごく遅いのです。
でも、待った甲斐のある、肉もたくさん入った豪勢な料理でした。
美味い!!
エジャール、妹さん、ありがとう。