アルゼンチンへの移動です。
チロエ島カストロより、まずプエルトモントへ戻り、そこでバスを乗換えアルゼンチンのバリロチェに向かいます。
朝7時10分にカストロを出発。
バスは、時々、お客さんを拾ったり降ろしたりしながら、快調に走ります。
8時半には、同じチロエ島内にある町アンクッドに到着します。
バスはここで暫く待機。
ここで僕は、ふと思います。
このペースでバスが走るとすると、果たして10時45分発のバリロチェ行のバスの乗換えに間にあうのか、と。
慌ててガイドブックをめくります。
するとアンクッド、プエルトモント間のバスでの移動時間の目安として、2時間半と書いてあります。
バスは、アンクッドを8時45分に出発しました。
とすると、このガイドブックを信用するとすれば、着くのは11時15分となります。
何やら嫌な予感がしてきました。
バスは何ごともなく走り続けますが、時間も刻々と過ぎていきます。
10時半を過ぎました。
プエルトモントの町は、もう少しです。
しかし、10時45分に間に合うかどうかは際どいところです。
あまりに心配になったので、車掌に間に合うのかと尋ねました。
すると二十歳を越えたばかりのような若い車掌は、笑って問題無いみたいな事を言ってくれます。
本当なのか?
そして、バスは、いよいよプエルトモントに到着!
時間は・・・10時50分!
若い車掌は、2、3台隣に止まっているバスを指差しています。
預けていたバックパックを引ったくる様に受けとると、そのバスまで走ります。
そのバスの前には男の人が立っていて、「バリチェロ?」と聞いてくる。
どうやら間に合ったようだ。
席に座りほっと一息つく。
暫くすると、カストロから同じバスに乗っていたおばちゃんらがのんびりと乗り込んでくる。
あらら、慌てていたのは、僕だけみたいですね。
バリロチェ行きのバスも、暫くすると出発。
今までのバスと同じで、相変わらず乗り心地が良い。
パンとコーヒーのサービスもありました。
走るにつれて、回りの景色の中に緑が多くなっていきます。
アンデス山脈が近づいてくるのが見えます。
これを越えるといよいよアルゼンチンです。
これだけの山々が南北に走っているのを見ると、チリという国が不自然なほど細長い形の国土である理由が納得できます。
バスは坂道を登り始め、高度を上げていきます。
暫くすると大きな建物が現れ、そこでバスは止まります。
ここでチリの出国手続きをするのです。
何のトラブルもなく、出国スタンプを押して貰います。
係りのお兄ちゃんは「こんにちは」「さようなら」と日本語で挨拶してくれました。
再びバスに乗り込みます。
今度は、アルゼンチンの入国審査です。
が、いくら走ろうともアルゼンチン側のイミグレーションが見えてきません。
今まで旅をしてきた経験から言うと、国境を陸路で越える場合、両方の国のイミグレーションは遠くてもだいたい100m位の場所にあり、出国手続きをしてすぐ入国審査をするというものでした。
しかし、今回は走れど走れど見えてこない。
昔、出会った旅人から聞いた話を思いだします。
その話とは、彼がアルゼンチンからブラジルの国境を越えた時、入国スタンプを押してもらうのを忘れて、それが後々トラブルとなって面倒なことになったというものだ。
もしかしたら、僕も気付かない内にスタンプをもらい忘れたのではないか?
回りは、頂に雪を抱く山々や深い青色をした湖の壮大な景色が広がるというのに、心配で心配で楽しむ余裕もありません。
ドキドキ、ドキドキ、です。
そして、30分位経った頃でしょうか、前方に建物が見えてきました。
そう、待ちに待った、アルゼンチン側のイミグレーションです。
よかったー。
他の乗客は当然という顔をして、入国審査を受けるためバスを降りていきました。
今回は僕がどんなに豪胆で何ごとにも動じない肝っ玉の大きい男かって話でした。