乗合ジープに乗って約3時間、シーロンに移動してきました。
標高1400mあまりの場所にあるメガラヤの州都です。
バングラデシュのすぐ北にあり、国境までもバスで3時間ほどで行けます。
ここもまたやはり暑さを嫌うイギリス人によって開発された町です。
ここはアーリヤ系のインド人だけでなく、東南アジア系の顔を持つ民族も住んでいます。
インド北東部地方最大の規模のバザールもあり、肉、魚、野菜などの食料品や衣類、生活用品となんでも揃っています。
売っている人もおばちゃん、おねえちゃんが多く、男の人ばかりが商売しているイスラムやインド圏のものとは異なって華やかさと活気があり、東南アジアの国に来たかのような錯覚を受けます。
細い迷路のような路地を歩いているだけでワクワクしてきます。
僕は今バングラデシュを目指して移動しているのですが、実はコルカタもバングラデシュの国境と近く、わずか数時間で行くことができるのです。
それを何故わざわざ遠回りしてバングラデシュの国境に沿ってぐるっと移動しているのかと言うと、ここシーロンに来たいという目的があったからなのです。
マーケットを見るため?
いやいや違います。
僕は「納豆」を食うためにここまでやってきたのです。
ここに美味しい日本食料理屋があるってことではありません。
この地方にはテュロンバイとよばれる納豆を食べる習慣があるのです。
インドで納豆?こりゃ行ってみないかんだろうと、思いたったわけであります。
この町に着き、さっそく地元の料理であるカーシ料理の店へと入ります。
メニューもないので、店員の兄ちゃんにとりあえず「テュロンバイ、テュロンバイ」と連呼します。
兄ちゃんは理解してくれたようで、笑顔で厨房の方へ注文を通しにいきます。
席に座りしばし待ちます。
ワクワクしてきます。
なんで納豆を食えると思うだけで、こんなに心浮き立つものなんでしょうか。
はたしてどんな物がでてくるのか。
しばらくすると兄ちゃんがお皿を運んできてくれました。
いよいよご対面です。
僕の目の前のテーブルにお皿が置かれます。
ん?
皿に盛られているのは、黄色っぽい色をしたご飯であります。
そして、その横に緑色をした野菜を刻んで味付けしたような物が2種類、玉ねぎに豚肉のようなものをあえた物、小さくトマトを刻んだ物が添えられています。
納豆らしき物は見当たりません。
うまく注文が伝わらなかったのでしょうか。
兄ちゃんを呼び、「テュロンバイ?」と訊きます。
すると兄ちゃんは、ご飯に添えられた緑の物を指差すじゃありませんか。
こ、これか〜!!
それはどう見ても日本の納豆のようには見えません。
大豆の形をそこに見ることはできません。
細かく砕かれているようです。
そこに何か野菜をすり潰したような物が混ぜられているのか?
う〜ん。
とりあえず食って見なければ。
それをスプーンの先にすくい取ります。
そして、ゆっくりと口に近づけていきます。
パクッ。
もぐもぐ。
ん?
なにやら苦いような味がします。
これが納豆?
う〜む。
‥‥!?
おっ、この後味は?
まさしく納豆です!!
インドの北東部の山間の町に納豆は確かに存在しておりました。