サナアの北にあるシャハラという町を訪ねます。
この町には残念ながら旅行会社を通してのツアーでしか行けません。
個人ではパーミッション(許可)がおりないのです。
イエメンでは、サナア以外の町を旅する場合、ツーリストポリスへ行ってその町を旅するという許可を得なければならないのです。
イエメンは、サナアなど普通の町を旅するには、治安は全く問題ない。
それは、僕が旅してきた国の中でも一番いいのではないかと思うくらいだ。
ですから、僕も危険に対するレーダーのレベルを最低限にして、人々と接するようにしている。
しかし、イエメンには部族という考え方が根強く残っており、それが国内紛争の火種となっているのです。
そして、政府に反感を持つ一部の部族が、政府に対する交渉のカードとして外国人旅行者を誘拐するという事件が残念ながら起きている。
シャハラもそのような地域に含まれてしまっているのだ。
ツアーは、一泊二日で、往復の自動車のチャーター料、ガイド料、アーミーによる護衛の料金を含めて、170USドルかかる。
さらに、ホテルの宿泊費に別途10ドルほどかかってしまう。
この価格、物価の安いイエメンではかなり高く感じてしまうが、幸いなことに人数が集まれば170ドルは参加人数で割ることができるのだ。
そのため、お金を節約すべく一緒に行く人を探したのだが、なかなか見つからない。
一人で170ドルは高いがどうしようかと思い、料金の確認のため旅行代理店に行ってみる。
するとそこの人に、金曜日に日本人が一人で行くことになっているので、一緒に参加するのなら85ドルで行けるよと、提案してくれたのです。
そうして、今日、シャハラに行くことになったのです。
一緒にシャハラに行くことになったのは、日本人のT君。
会社員で12日間の休暇を取りイエメンの旅をしているらしい。
会うのは、今日が初めてだが、感じの良い人であり少しほっとする。
可愛い女の子ならなおさら良かったのだが、そんな贅沢なことは言いませぬ。
車は、検問を一回受けた後、まずアムランという町に到着。
1時間ばかし、この町の旧市街を見学する。
ここの子供たち、かなり人懐っこく、たくさんの写真を撮った、というより撮らされた。
その後、車に乗り込み、再びシャハラを目指します。
するとまた検問所にあたりました。
そして、ここからアーミーの護衛が付く。
僕らと他のツアーの2台の車に対して、一台のアーミーのトラックが付くのだが、これがなかなかいかつい。
そのトラックの荷台にはでっかい機関銃が備え付けられており、また荷台には8人ものライフルを担いだ迷彩服を着たアーミーが乗り込んでいる。
こんなにすごい護衛が付くって、どんなやつらが襲ってくるのだと思ったら、さらに道を進むと道行く人がライフルを肩からぶら下げて歩いているのが目立つようになってくる。
サナアの人がジャンビーアを持つように、この辺りではみんなライフルを持つようだ。
車は、未舗装の凸凹道を1時間ほど走ると、山の麓に到着。
その山の天辺を見上げると、そこには小さな町が見える。
そここそが、シャハラなのである。
そこでトラックに乗り換える。
運転手は、16才だという子供のような男の子。
ガイドに、イエメンでは16才でも車の免許は取れるのかと尋ねると、サナアでは駄目だがここではノープロブレムだと言って、笑っていた。
トラックは、傾斜30度はあるのではないかという急斜面の道を上っていく。
荷台に乗っていた僕は、とてもじゃないが尻が痛くて座ってなんていられない。
手すりに掴まり、立って乗る。
しかし、道中の景色は素晴らしい。
何重にも重なる黒い岩肌の見える山々が、遥か遠くまで見渡すことができる。
こんな風景がアラビア半島のイエメンにあるなんて誰が想像することができるであろう。
雨季には、この辺りには緑の木々が生い茂り、あたり一面緑になるらしい。
一時間ほどで頂上のシャハラの町に到着。
ここは、16〜17世紀に、アラビア半島が巨大なオスマントルコの統治下にあった時代にも抵抗し続け独立を保ち続けたという勇敢な山岳部族が暮らす町。
そのあまりにも激しい抵抗のため、トルコ側に多大な犠牲者が出て、この付近の山岳地帯はトルコ人の墓とも呼ばれているらしい。
この町は、それ程大きくはないが、4、5階建ての石造りの重厚な建物と、多くの貯水池がある。
この貯水池の存在こそ、長い間抵抗できた大きな理由でもあったようだ。
宿にチェックインした後、ガイドに案内されて観光に出かける。
目指すは、17世紀に造られたという、幅3m、長さ32m、深さ300mに達する峡谷に架けられた橋。
これは、石で造られていて幅は2mもないような小さな橋なのだが、よくこんな所に造ったものだなと感心する。
建造中には、多くの人命が犠牲になったのではないかとも思う。
橋の上で、記念撮影をする。
手摺も低く、何かの拍子ですぐ下に落ちてしまいそうで怖いので、なるべく真ん中に立つ。
T君は、手摺に腰かけちゃったりしてます。
怖くないんかい!?
僕は、高い所は好きなんです。
ただ、苦手なだけなんです‥‥。
僕には、勇敢な山岳部族には間違っても入ることはできなさそうです。