チェンマイからタイ北西部ミャンマー国境にも近い町メーホーソンにバスで8時間ほどかけて移動。
目的はこの旅に出て初めて親しくなった人、Yさんと再会するためです。
Yさんはタイに住み首長族の写真を撮っているカメラマンです。
2年以上ぶりの再会。
やっぱり嬉しいもんです。
ビールを飲みながらお互いの2年分の話で盛り上がります。
2年前にも同じようにここでこうしてグラスを傾けていたことを思うと、なんか不思議な感じがします。
果たしてこの2年で僕は何かが変わったのでしょうか。
髪が伸び、日に焼け、少し痩せ、そして、小汚くなったくらいでしょうかね。
そして、2年前と同じくYさんに首長族の村を案内してもらいます。
村には首にリングを巻きつけた首の長い女の人たちがいます。
ここは2年前と変わっていないように見えます。
しかし、Yさんの話によると、ここには今、大きな変化の時が訪れているらしいのです。
それは何かというと、アメリカへの移住という問題です。
首長族の人々は元々ミャンマーに住んでいるのですが、観光客を誘致するという目的のためタイに難民として連れてこられたらしいのです。
首長族の人たちもお金を稼ぐためのビジネスとして割り切ってここに来て生活しているので、観光客が村に来ることを歓迎しますし写真なども普通に撮らせてくれます。
しかし、難民という立場上いつまでのもここに住み続けるということもおかしい話であります。
実際、この近辺にある難民キャンプには首長族以外の少数民族の人々もたくさんいるのですが、それらの人々はニュージーランドやフィンランドに移住していっているといいます。
そんな中、貴重な観光資源である首長族がいなくなっては困るとメーホーソン市が、首長族の人たちの移住を長年、拒んできたらしいのです。
しかし、いよいよメーホーソン市側も押さえきれなくなって、首長族の人たちの移住の具体的な話がでてきているようなのです。
ですから村では移住の話、アメリカの話でもちきりだと言うことなのです。
アメリカに行くものだと決めつけ、すでに首のリングを取り外してしまった人もいます。
若い女の子はもう伝統を守るという気持ちはあまり強くなく、観光のために仕方なくリングを付けているという現状みたいです。
やはりリングをつけるということは、肌が荒れたり肩がこったりと身体的な負担がかなり大きいのです。
そのため若い女の子がリングを付けていても、それほど首の上の方までびっちりと詰めていなかったりするので、あまり首は長くなってはいません。
本当に長い人たちは年配の女性だけになっています。
ですからある意味、もう首を長くするという伝統は廃れてしまっていると言ってもいいかもしれません。
そういったものがなくなるということは観光客である僕にとっては少し寂しい気もしますが、別に強制されてなくなっている訳でもなく自ら選択した結果であり仕方がないことなのでしょう。
そんな人たちなのでみんなアメリカへの移住に不安を抱きつつも楽しみにしているようです。
特に男性は喜んでいるようです。
と言うのも男の人たちは難民という立場上働くこともできず、女性の稼いだ金でただ村でだらだらと過ごすという日々を送ることを余儀なくされているからです。
ただ首長族を見学しに来る観光客の邪魔にならないように「透明人間」となる、それが仕事でしょうか。
例えば僕が村を歩いている時に小さな姉弟に会いました。
可愛かったので二人の写真を撮ろうとしたのですが、僕がカメラを向けると男の子はすす〜っと横に移動して写真に写らないようにしようとするじゃありませんか。
なんていじらしいのでしょうか。
おいおい、一緒に写っていいんだよ。
そんな男の人たちが自由の国アメリカでの新生活に憧れるというのは当然のことです。
こんな電気もない村で過ごす素朴な人々が、競争の激しい弱肉強食のアメリカ社会でやっていけるのかという心配もありますが、自分の意思で自由に生きていく、厳しいけれど充実した生き方なのでしょう。
頑張れ、首長族。
これから厳しい道が待ち受けているかもしれないが、強く生きていってくれ!!
って、人の心配をしてる場合じゃないんだよな。
もうそろそろ旅を終えて日本に帰る自分。
厳しい日本の社会で強く生きていってくれ。
負けるな自分!!
頑張れ自分!!