カシュガルから近郊にあるアトゥシュという町に日帰りで行きます。
別にここには興味もなかったのですが、同じ宿に泊まっている日本人T君に漫画「マスターキートン」に出てくる人物のお墓があるらしいけどって言われ、がぜん行く気になりました。
ガイドブックを読むと確かにそう書いてあります。
「マスターキートン」好きとしては行かない訳にはいかんでしょう。
まぁ、ここ最近カシュガルでだらだらとしていたので、そろそろ観光でもしてみたいなと思っていたところなので。
カシュガルから10人乗りほどの小さなバスに乗り、アトゥシュまで行きます。
道路はかなり広くてきれいで快適で、50kmほどの道のりを1時間弱で着きました。
目指すソルタン・マザールと呼ばれるお墓は、町のちょっとはずれにあるようです。
1元(約16円)の市バスで行けるみたいなのですが、ガイドブックには本数がかなり少ないのでタクシーをチャーターして行った方がいいと書いてある。
ためしに交渉してみると往復で10元だと言う。
となると一人5元なので悪くないんで乗ろうかと思いましたが、ちょうど向こうからバスがやってくるのが見えます。
タクシーのおっちゃん、ごめん、バスで行きます。
ソルタン・マザールには15分ほどで着きます。
入場料に10元(約160円)とられますが、その価値は全くないほどの小さくしょぼいものでした。
実は「マスターキートン」に出てきたと言っても、僕はどのように登場したのかも覚えていないく、その程度の思い入れでは感動しようにもできないってもんです。
とりあえず写真だけ撮っておきます。
ソルタン・マザールの隣には大きなモスクがあったのでついでにそっちも覗いてみることにします。
そこに入ると地元のウイグル族の女の人たちから声をかけられました。
彼女らは中国語を話せないのですが、その中に小学生くらいの女の子がいて、学校で習っているのか一人だけ中国語を話すことができました。
僕はもちろん話せないのですが、T君は中国語がぺらぺらなので彼女と話をします。
すると向こうも外国人が珍しく興味があるのかいろいろと話しかけてきます。
そして、モスクを出るとスイカをご馳走してくれます。
いつも思うのですが、やはり言葉を話せると旅がさらにおもしろくなりますね。
そうは言ってもなかなか言葉を覚えない僕ではありますが‥‥。
そのように彼女らとしばらく過ごしていると、一人の警察官が近寄ってきました。
そして、僕らに向かってパスポートを見せるように言ってきます。
単なるチェックかなと思って渡すと、誰かと携帯電話で話しながら手帳にパスポート番号などを書き写していきます。
それが済んで、僕らを解放してくれるのかと思ったのですが、パスポートのコピーをとりたいので一緒に近くの警察署まで来てくれないかと言ってきました。
時間もあったし、断るわけにもいかないので行くことにします。
そして、パトカー!!に乗り込みます。
中国にてパトカー初体験です。
日本でもパトカーに乗るようなことはなかった‥‥はず。
ちょっと嬉しいです。
5分ほどで警察署に着きます。
中に入り、会議室のような所へ通され、椅子に掛けて待つように言われます。
しばらくすると二人の警察官が部屋に来て、パスポートを出すように言います。
彼らはパスポートをぺらぺらとめくり見ています。
しかし、パスポートのコピーをとるって言ったわりには、それを持ってどこかへ行こうとする素振りは見せません。
ちょっといやな雰囲気。
すると新たに二名の警察官が部屋に入ってきて、全員で四名になります。
全く笑顔はなし。
ピーンっと張り詰めた空気が部屋を覆います。
完全にいやな雰囲気。
英語が話せない警察官は、中国語でT君に話しかけます。
T君がそれに答えます。
するとまた警察官が何か言ってきます。
T君がまたそれに答えます。
なんだなんだこのなんとも言えないいやな空気は。
警察官はなおもしつこく質問し続けます。
T君が僕に言うには、彼らは僕らがここにきた目的はなんだということを執拗に訊いてくるようなのです。
僕らは、「観光だ。」と言うしかありません。
こんななにもない田舎町に外国人がいるのはおかしいと思っているのかもしれませんが、僕らがテロリストなわけないじゃないですか〜。
それでも警察官は難しい顔をして座っています。
ピーン。
空気というものの存在をまざまざと実感できます。
そして、しばらくして何か一言話し、会議室に一人だけ残り、後の三人はパスポートを持って部屋から出て行きました。
T君はほっとした顔をして、「どうやら疑いは晴れたみたいだよ。」と言ってきました。
その言葉を証明するかのように、残った一人の警察官は笑顔を見せ世間話をしてきます。
いや〜、ほんとほっとしました。
しかし、これがもし中国語を話せない僕一人だったらどうなっていたのでしょうね。
警察署からカシュガル行きのバス乗り場までパトカーで送ってくれました。
ちょっとドキドキしましたが、帰りのバス代1元も節約できたことだし、なかなかおもしろい体験でした。
もうパトカーに乗るのはごめんですけど。