朝7時にバスに乗り、ホデイダへ向かう。
6時間ほどの移動であったが、バスは思いの他けっこう新しい最新のバスであり、道も全て舗装されており、乗り心地は快適であった。
ホデイダは、イエメンの西に位置する紅海に面する港町だ。
この辺りの気候は熱帯性で、夏は、湿度100%近くにもなり、気温は40℃を超える。
今は冬で、まだましだとは言え、標高2400mの涼しいサナアからくるとずいぶんと暑く感じます。
漁港をみたりして町をうろついていると、子供たちが凧揚げをしている場面にでくわしました。
珍しいなと思い写真を撮ったりしていると、その中の一人の男の子がカートを食べない?こっちへ来なよみたいな感じで僕を誘ってきたので、ついていってみることに。
細い路地を抜けていくと、大勢の男たちが集まっている一角にたどり着きました。
路地の上に天幕が張られ、その下に座れるようにマットが設置され、奥にはステージのようなものも設けられています。
そのマットの上に男たちが座り、カートを食べているのです。
僕の姿を見つけると、何人かのおっちゃんが僕の分の席を空けてくれ、こっちへ座れと招いてくれます。
そこに座ると、またたく間にたくさんのカートとコーラが僕の前に用意されます。
いったいここはなんなのか分からないまま、とりあえずカートを食います。
ここは、みんなが集まってカートを食う所なのでしょうか。
その割には、ステージでは音楽が演奏されており、ちょっとしたパーティーのようです。
僕の周りにいる人たちはみんな英語を話すことができないので、質問することもできず、とりあえずもくもくとカートを食べ続けます。
そして、5時を過ぎる頃になると、夕方のお祈りのためいったんお開きのようになり、音楽の演奏も止み、そこにいる男たちの姿もまばらになりました。
きりがいいので僕もそろそろ帰ろうかなと思った時、ステージ近くに座った人からこっちへ来るように呼ばれました。
近くに行くと、まぁ横に座れと言われ、またしてもカートをくれました。
その人は、少し英語を話せたので、いろいろと話をします。
その会話から分かったことによると、どうやらこの集まりは結婚式のようなのです。
8時くらいになると新郎があらわれるという。
おお〜結婚式かぁ〜、これを見逃す手はない。
まだまだ帰ることはできんよね。
しばらくすると白いワンピースのアラブ服を着た新郎と思われる人が二人あらわれ、ステージ上のソファーに腰掛けました。
どうやら2組同時の結婚式のようなのです。
ステージ上では、ソファーを挟むようにして2組の楽団がおり、交互に演奏を繰りひろげています。
しかし、その他にはスピーチや余興といったものはなく、大音量の音楽がスピーカーから鳴り響く中、みんなひたすらカートを食い続けています。
時たま、新郎の前に行く者があり、お祝いを言ったり、多分祝儀と思われる袋を手渡したりしています。
その内、僕もステージに上げられ、何故か新郎の間に座らされたりします。
全くの部外者なのにこんな所に座らされ恐縮のいたりです。
そんな僕に新郎は、自分の被っていた帽子を被らせてくれ、首に花輪をかけてくれ、カートまでくれます。
いや〜、そんなことまでしてもらって申し訳ないです。
とにかく、おめでとうございます。
しかし、この催し、大勢の人がいるのですが、とにかく男、男、男の男だらけです。
やはり、イスラムの世界です。
男と女は別々にやるもんなのでしょう。
でも、この宴の最後には、きっと綺麗に着飾った美しい花嫁が現れる‥‥はず。
その期待を胸に、繰り返し演奏される僕には同じように聴こえるアラビア音楽が流れる中、ひたすらカートを食いながら待ち続けます。
時間は、9時になり10時になり11時になりと刻々と過ぎていきます。
しかし、相変わらず花嫁が現れる気配は微塵もない。
ただただみんなカートを食っているだけ。
僕もいい加減気持ち悪くなりそうです。
やっと手持ちのカートがなくなりそうだと思うと、それに気づいた人が、すかさず僕に新たなるカートを差し入れてくれます。
また、僕の食べる手が止まっていると、もっと食べろよと勧めてきます。;
その心遣い大変ありがたいのですが、いいかげん辛い。
僕のほっぺも、パンパンに膨らんでいます。
早く花嫁よ現れくれ〜、それまではこの会場から去ることはできない。
そして、12時を過ぎた頃でしょうか。
先ほどの少し英語を話せるおっちゃんが僕の方へ近づいてきました。
そして、俺はもう帰るが、この会は3時ころまで続くので楽しんでいってくれと、言うじゃありませんか。
えっ、帰る?
花嫁は?
そして、周りを見渡してみると、心なしか人の数が減っているように感じます。
もしかして、花嫁は最後までその姿を見せず、ひたすら男たちだけでカートを食い続けるのか〜。
なんてことだ〜。
結婚式に花嫁が現れないなんて‥‥。
恐るべし、イスラムの世界。
とにかく新郎の方たちおめでとうございました。
末永くお幸せに。